理想のサウナ室を実現!構造・内装・設計のポイント

はじめに
これからホテルや旅館、温泉施設にサウナを導入したいと考えるときに、いわゆる「普通のサウナ」はもはや珍しいものではなくなってきています。しかし一方で、あまりにも形状のデザイン性にこだわり過ぎると、熱効率や施工上の問題が現れます。
そこでここでは、最低限求められる適切なサウナ室の形状や構造、また内装の配置について詳しく解説していきます。
※idetoxでは屋内・屋外問わず、豊富なカスタマイズができるサウナを多数販売しています。建築条件やご要望に合わせた最適なサウナをご提案いたしますので、お気軽にお問い合わせください。

サウナ室の構造
サウナ室の外枠は、基本的には立方体や直方体に近い箱型構造をした単純な形が理想的です。
「デザインに面白味がない」と感じるかもしれませんが、複雑な構造が難しい理由が主に3つあるからです。
- 熱効率
- 施工
- 防火、防災
それぞれ簡単に解説していきます。
熱効率
まずは熱効率の問題です。
凹凸がありすぎるものや縦や横に長い形状だと、温度のムラができやすく、全体の温度管理が難しくなってしまいます。
施工
次に施工の問題です。
業務用サウナは、室内の温度を高い状態で保つために、断熱層を壁に入れるのが一般的です(断熱層については後述)。断熱層を入れることで壁に厚みが出るなどの制限が出てしまうため、例えば星型のような自由なデザインはそもそも施工面での難易度が高いのです。
防火・防災
最後に防火・防災対策です。
サウナ室では熱を扱うため、全体を耐火構造体で包み、サウナ室で火災が発生した際に炎や煙が広がるのを防ぐために「防火区画」とする必要があります。
また耐震性などの問題で壁芯々間の距離に制限が出たり、換気が十分に出来る構造にするなど、防災面で様々な構造上の制限が出てしまうのです。
消防法は全国一律の法律ですが、設置する自治体によって詳細な規定を設けられています。具体的な項目の確認は各自治体の管轄部署への連絡が必要です。
ベンチの配置

通常サウナ室では床に近いほど温度が低く、天井に近いほど温度が高くなります。それを利用し、利用者が好きな温度でくつろげるように、2段~3段程度のベンチの設置が望まれます。
しかし、4段以上になると、室内の温度差が大きく開き過ぎてしまい、管理が難しくなったり利用者に嫌がられたりしてしまうため注意が必要です。もし4段以上のベンチを配置する場合には、定期的にブロワー等で強制的に空気循環をするなどの工夫が必要になるでしょう。
2段以上のベンチの場合、ベンチの奥行きは、上段の人の足とぶつからずに快適に座れるように、通常の椅子の奥行き(約450mm)よりも長く(700mm以上)取ることが望ましいでしょう。

また本場のフィンランドを始め、北欧のサウナではベンチの前に丸太や板などを置いて足置きに使えるようにする場合が多いです。さらにベンチ上で横になることが出来るように長く奥行きを取っている場合もあります。
「他にはないサウナ」を作るためには座る位置や座り方にもこだわって配置していきましょう。
ストーブの配置
ストーブは基本的に出入り口付近の隅に配置するのが一般的です。
出入り口付近はどうしても利用者の出入りの際に温度が下がってしまいますね。もしストーブを出入り口と反対側の隅に配置してしまうと、部屋の温度差が余計に大きく開いてしまうのです。もし導線などの問題で出入り口と反対側にストーブを置かなくてはいけない際には、換気口の位置を調整して空気循環を工夫する必要があります。
ただし、横長のサウナ室の場合には、2台のストーブを使って出入り口側と反対側の両方に設置することで、扉の開け閉めによる温度の低下を防ぎながら部屋を効率よく温めることもできます。
また、部屋の大きさが十分に広い場合には、部屋の中央に配置する場合もあります。しかし、火傷のリスクを下げる等の理由でストーブ以上に広いスペースを使用することになるので注意が必要です。

またストーブの配置がどこであれ、ストーブ周りには保守・点検・防火に有効なスペースが必要になります。地域によっては法規(消防関係)で具体的な広さが定められていますので確認しておきましょう。
※上記画像は日本サウナ・スパ協会のホームページに記載されている「サウナ設備設置基準 火災予防技術情報27号として提供」を基にしております。
給排気口の配置

一般的に、業務用サウナには換気用の穴が必要になります。
この換気用の穴は、室内の酸素濃度を保つなど防災上の観点で必要です。ただそれだけではなく、新鮮な空気を正しく循環させることで気流を発生させ、利用者の体感温度を上げやすくするといった効果もあるため、サウナ室の非常に重要な要素の1つになります。
サウナ室の形状にもよりもますが、一般的な直方体型のサウナ室の場合、給気口となる穴をストーブ側の壁に、排気口となる穴を反対側の壁に配置する場合が多いです。(具体的な配置例については別記事で詳しく解説していきます。)
また排気口には防火対策として、防火ダンパー付きのものを使用するようにしましょう。
出入り口・窓の種類
出入り口は防火、衛生、保温の観点で、何でも使用して良いわけではありません。
まず火災が発生した際に、中にいる人が逃げやすいように「外開き」にする必要があります。
また常時閉鎖式で、火が回りにくい「乙種防火戸以上の性能」の扉を使用する必要があります。
さらに、サウナ室で火災が発生しているときに、それが外から分かるように「外から中が見える窓が付いている」必要があります。
サウナ室の扉が重いのはこれらの理由があるからなのです。
また窓枠や扉の金属部は火傷や火災を防止するために木材で覆う必要があります。蝶番などの油が必要なパーツは、飛散防止のためにサウナ室外に配置するのがいいでしょう。
断熱層
サウナ室内はもちろん、ストーブの周りは特に非常に高温になります。保温はもちろん防火の観点でも壁や床は断熱層が必要です。十分な断熱層があるとストーブのランニングコストを抑えたり、室内の結露対策にもなります。
サウナ室の断熱層の作り方にはいくつかの種類があり、正解はありません。ただ一般的には「ロックウールやカラスウールなどの不燃材」「防湿膜」そして「空気層」を使って断熱の層を作っていきます。この際入念なシーリングを行い気密性を高くしておくことが重要です。
また仕上げ材として木材を使っていきますが、ストーブの周りの壁や天井だけはタイルやレンガなどの不燃材を用いることが多いです。日本サウナ・スパ協会によれば、タイルは炉器質がモルタルとのなじみも良く、最も適しているとされています。
そして見落とされがちなのが床の断熱です。
サウナの中でも床付近はもともと温度が高くなりにくいため、断熱工事を省略されることがよくあります。しかし、実際にはストーブのランニングコストに少なからず影響を与えることが日本サウナ・スパ協会のテキストでも指摘されています。
初期費用こそかかりますが、ランニングコストを抑えて長く運営していくためには床の断熱工事も検討しておきましょう。
防水層
サウナの利用だけをイメージしていると忘れてしまいがちなのが防水層です。
防水層は浴室からの水の浸透やサウナ室内の結露を防いだり、またサウナ室内の水洗いを可能にする役割があります。もし防水層がない状態で、水分が外から入ってくる構造になると、室内の木材がすぐに腐敗してしまう原因になってしまいます。特殊な事情がない限りは必須と言えるでしょう。
防水膜としては長年の実績があるアスファルト防水だと間違いありませんが、ややコストが高い傾向があります。そのためシート防水や塗膜防水が近年では利用されることも多いようです。
idetoxでは豊富な品ぞろえで事業用サウナを取り扱っております。
サウナの導入に関してお悩みでしたら、「お問い合わせページ」か「お電話(092-407-7887)」よりお気軽にご相談くださいませ。
■参考
・日本サウナ・スパ協会 サウナプロフェッショナル公式テキスト
・suumo(https://suumo.jp/article/oyakudachi/oyaku/chumon/c_knowhow/bokado/)
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