サウナで起業する前に知ってほしい事業計画と市場調査の考え方
はじめに
第3次サウナブーム以降、順調に拡大しているサウナ市場。
サウナーの中にはサウナで起業する夢ができたり、これまで考えていたサウナ事業を実現する舞台が整ったと思っている方も多いかもしれません。
しかしサウナで起業するにあたって、どのような考え方で計画を立てていけばいいかわからない方もいらっしゃるかと思います。また、1つの新しいアイデアがあっても、それだけで事業が上手くか不安を抱えている方もいるかもしれません。
そこでここでは、サウナで起業するにあたって抑えておくべき事業計画のポイントや考え方の流れを解説していきます。
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何をどう考えればいいか?
サウナで起業するにあたって、まずは市場調査が必ず必要です。
サウナ事業で、これまでに例がないような新しいアイデアが浮かんでも、そこに需要がなければ運営が成り立ちません。また、具体的なサウナ起業のアイデアがないときも、市場調査によって生まれるアイデアがあります。
今の自分の考えを一旦抑えて、フラットな目線で市場を見ていきましょう。
調査を行うのは「市場全体」「顧客」「競合」の主に3つです。
調査の方法はメディアの記事を見たり、自分で集計して考えたり、マーケティング会社にレポートを作ってもらったりと様々です。一つの媒体だけで考えると、穴があって偏った見方になったり間違った見方になったりしてしまいますので、調査する際には複数の方法で同時に調査をするように心がけましょう。
市場全体
まずはサウナ市場全体の動向を確認していきましょう。
ただ日本や世界のサウナの市場規模などを眺めるだけでは意味がありません。この調査の最終的な目標(目的)は1つ。
- 市場全体が今抱えている課題や問題を確認すること
です。
市場全体の課題と解決策
事業を始める際に、既存のサウナ事業全体が抱える課題・問題をある程度解決できる方法で始めないと、同じ課題に直面して伸び悩んだり、課題を避けて運営を始めた新たな事業者に追い抜かれてしまいます。
例として2024年3月現在、ロシア・ウクライナ戦争や円安等により「エネルギー価格の高騰」が深刻化しています。これによって燃料費が上がり、いくつかの老舗の銭湯は廃業を余儀なくされている、という報道も見かけます。
一時的なことで、すぐに解消される問題かもしれませんが、今後も同じようなことが起きない保証はありません。
これを少しでも解決するために、例えば太陽光発電などを初めから設備に取り入れたり、サウナ室の断熱材に効果の高いものを利用したり、薪ストーブを使ったサウナを併設してリスクを分散するなどの手段が考えられます。
このように今の市場全体の課題を明確にして、それを解決する方法で事業を考えていきましょう。
このとき「日本の既存の事業者」はもちろん、「他のジャンルの事業者」や「海外の事業者」が、「どう乗り越えようとしているか」や「過去に同じことが起きたときにどうしたか」を調べて参考にすると解決策が見つけやすいですよ。
顧客
次に確認するのは顧客です。
サウナ人口やその顧客層の動向を分析したり予測していきます。最終的な目標(目的)は3つ。
- 顧客となるターゲットを絞ること
- ターゲット層の需要規模を調べること
- ターゲットが抱えている不満・不安・不便を確認すること
です。
ターゲットを絞る
「すべての人間がターゲットで、すべての人間が満足する施設をつくる」というのが理想的かもしれませんが、人それぞれ考え方が違うため、まず不可能です。(例えばサウナの種類が多い施設が好きな人もいれば、選択肢が少ないシンプルなレイアウトを好む人もいます。)
なにより、しっかりとターゲットを絞って、その人に合ったサウナ施設を作っていくことで、キャンペーンや設備投資などの費用対効果(コスパ)を高くすることが可能になり、長く運営していくことが比較的容易になります。
もしサウナ事業の具体的なアイデアが決まっていない場合は、ターゲットを明確にすることで、サウナ施設の「デザイン」や「規模」、「立地」や「利用料」などの条件が自然に絞られていきます。
反対にすでに具体的なアイデアがある場合は、それがどのターゲットに向けているのかを改めて考えていく必要があります。
ターゲットの考え方として、以下の項目を参考にしながら具体的な人物像(ペルソナ)を設定していきましょう。
- 人口統計学的属性:年齢、職業、年収、家族構成
- 地理的属性:居住地、職場、最寄駅、行動範囲
- 心理的属性:性格、ライフスタイル、趣味
- 行動変数:利用頻度、買い物で重視すること、購買意欲
ここでは例として以下のようなターゲットを考えていきます。
- 30代男性
- 年収400万円
- 新橋駅を通勤で利用
- 妻子あり(家族3人)
- 休日は家族サービス
- でも一人で過ごすのが好き
- いつもタイムパフォーマンス重視
- 平均的なサウナ利用者(ライトユーザー)
ターゲット層の需要規模を調べる
先程設定したターゲットにサウナを提供したとして、どのくらいの需要があるのかを考えていきます。
ここでは設定したターゲットをもとに、「新橋駅周辺で男性専用のサウナ施設を開業し、仕事帰りの利用を狙う」と仮定します。
そしてそのターゲット像をもとに、各要素を調べると需要がある人口やその金額をザックリと推定することができます。
※以降の具体的な数値は例として作っており、正確ではありませんのでご注意ください。
人口
まずは需要がある人数です。
先程のターゲット層の人口比率などをメディア等で調べます。
- 30代男性 ⇨ 人口の5%
- 年収400万円 ⇨ 30代男性の約40%
- 新橋駅を通勤で利用 ⇨ 1日に50万人
そしてそこに
- サウナ人口は日本人全体の10%
- サウナの平均利用回数は月に3回(10日に1回利用)
という要素を加えると、ターゲットの人口は「500,000×5%×40%×10%×3÷30」で
「1日に100人」
と推定することができます。
これで人口需要の計算は終了です。
これは後述する「競合」や「シェア」を考慮することで、施設の「規模」を決定する重要な指標になります。実際には季節指数や曜日指数などを加えると、より正確になります。
金額
次に1日に使われる(収入を得る)金額を推定します。
人口需要のときと同じように、メディア等の情報を参考にしながら次のように想定します。
- 年収400万円で共働き、子どもあり ⇨ 1ヶ月の教養娯楽費は20,000円
ここに
- サウナのライトユーザーがサウナに使う平均金額は、1ヶ月の教養娯楽費の30%
- サウナの平均利用回数は月に3回(10日に1回)
という要素を加えるとターゲット1人あたりの1回のサウナ費の上限は「20,000×30%÷3」で「2,000円」となります。
さらに先程の「1日100人」という人数を考慮すると、金額としての需要は
「1日に200,000円」
になります。
こちらも後述する「競合」や「シェア」を考慮することで、施設の「利用料」を決定したり、想定される売上を考えるための重要な指標になります。
これで需要の推定は終了です。
※実際にはターゲットにしていない層も施設に訪れることになりますが、そこはあくまでも「おまけ」程度に考えるべきです。まずは、ターゲット層に絞って考えるようにしておきましょう。
ターゲットの不満・不安・不便を調べる
設定したターゲットが、サウナの利用に関して考えている「不の感情」を調べることで、施設の「スタイル」を絞ったり「アイデア」のヒントにすることができます。
調べ方は調査会社のレポートを見るのも手の1つです。ただ、もし地道に調べるのであれば、Googleマップやサウナイキタイのようなレビューが確認できるサービスで、同じような形態のサウナ施設の悪いレビューを見たり、TwitterなどのSNSで負の感情を見ていくのが手軽です。
このときの注意点は、ターゲット以外の声まですべて拾っていかないようにすることです。レビューなどを確認するときに、その声が「本当にターゲット像と一致しているのか」を必ず確認しておきましょう。
例えば今回設定したターゲットには「休日は家族サービス」という項目がありました。
「休日は家族サービス」という点から、サウナの利用は平日の仕事前か仕事終わりというのが想定できます。同じような利用層のレビュー記事で「平日はいつも混み合っていてくつろげない」というレビューがあったとすると、これがターゲットの「不満・不便」にあたります。
この場合、「サウナを(個室・大部屋の種類に限らず)完全予約制にして人数制限をし、利用者がくつろげるようにする」というアイデアが浮かびます。
また今回のターゲットには「タイムパフォーマンスを重視」という項目もありました。
レビューに「受付が混む」や「利用手順が分かりにくい」などが記載されていたとします。するとそれをヒントに「ネット決済にして受付はバーコードタッチだけで通れるようにする」や「施設の利用手順などのガイドは先にネットで確認してもらう」といったアイデアも考えることができます。また単純にタイムパフォーマンスを考慮して「サウナ室の温度や湿度を高くし、他の施設よりもすぐに発汗できる環境にする」というアイデアも良いと思います。
このようにターゲットの「不の感情」を明確にすることで、これから始めるサウナ事業の「スタイル」を絞っていくことが可能になります。
ただ、あまりにも尖りすぎた、変わったスタイルのサウナ施設にすると、その分需要が減ってしまうリスクがありますので注意しましょう。
競合
最後に競合のサウナ施設を調べていきます。
競合を調べる最終的な目標(目的)は1つ。
- 新規参入する余地があるのかを確認すること
です。そしてそのために競合を確認しておくポイントは3つ
- 立地
- ターゲット層
- スタイル、戦略
になります。
立地
サウナ施設は、実際にお客さんに足を運んでもらって成立する事業です。
そのため立地が果たす役割は大きく、日本の市場全体のシェアなどはほとんど意味をもちませんし、遠く離れたサウナ施設は(日本中から集客する宿泊施設などのモデルを除いて)基本的に競合になりません。
自身が設定したターゲットが利用しやすい場所に絞って、どのくらい競合がいるのかを調べていきましょう。
逆に言えば、競合にならない遠く離れたサウナ施設は、スタイルや戦略の良いところを自身のサウナ事業のアイデアのヒントにしても良いと思います。
ターゲット層
次に立地が被っている競合がどのターゲットに向けた施設なのかを考えていきましょう。
ターゲット層が全く違うサウナであれば、立地が被っていてもそれほど深掘りしていく必要はありません(競合になりにくいです)。
もし、ターゲットが被っている場合には、その競合が持っているターゲット層のシェアも可能な限り調べておきましょう。
スタイル・戦略
立地もターゲットも被っている競合は、そこがどのようなスタイルで、どのような戦略で事業を行っているのかを調べます。
サウナの種類・規模・営業時間・プロモーション方法・強みや弱みなどを入念に調べていきましょう。
新規参入する余地があるか
最後に、これまで調べた競合と、想定した自身のサウナ事業を比較して新たに参入する余地があるのかを考えます。
例えば、立地・ターゲット・スタイルがすべて似ている競合があれば、シェアを取り合うことになりますね。
明らかに需要のほうが大きい(供給が追いついていない)場合を除くと、同じスタイルでのシェアの取り合いは最終的に価格勝負になってしまいがちです。価格勝負になれば、基本的に資本に余裕のある方が勝者となります。相手の企業が力尽きるまで(あるいは常連客を奪えるまで)、赤字の安売り戦略を続けられる自信がない限り、このような新規参入を行うべきではありません。
この場合は、最低でも事業のスタイルは競合と違うものを目指して計画を練り直したほうがリスクが少なくなります。
競合とスタイルや戦略が違う場合は、ターゲット層のシェアをどのくらい取ることを目標とするのか、またそのときに想定される売上はどのくらいになるのかを、金額需要をもとにして計算します。
そして開業にかかる資金(固定費)やランニングコスト(変動費)を見ながら利益計画と睨めっこしていきます。ここで事業が成り立つ見込みが付けば、ようやく参入の余地があるといえるでしょう。
時間をかけて何度も再考しよう
1度閃いた事業計画が、そのまま新規参入の余地がある最適な方法であるとは限りません。
市場や顧客、競合をみながら、ターゲットを変えたり事業のスタイルを変えていき、最終的にコストパフォーマンスが最もいい事業運営の計画ができるまで、時間をかけて何度も何度も練り直していきましょう。
そして可能な限り、あとから新規参入してくる事業者が簡単に真似できないスタイルを目指していくと、より自身の事業の寿命を伸ばすことにつながるでしょう。
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