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コラム

水風呂用チラーの選び方|自宅サウナに必要な冷却能力(W)を逆算

水風呂用チラーの冷却能力(W)の選び方

はじめに

サウナから出て水風呂に入ったのに、ぬるい。

まるで炭酸の抜けたビールになったような、あの脱力感を味わったことはありませんか。自宅サウナでも同じです。自宅にサウナを設置しても水風呂がぬるければ、その良さが半減してしまう方も多いのではないでしょうか。

自宅サウナ用に設置する水風呂用浴槽の水温は、外気温に引きずられて上がってしまいます。そこで施設の水風呂のようにキンキンに冷やし、それを維持するためにあるのが水風呂用のチラーです。

しかし、導入を検討していざカタログを開くと、同じ「W」でも冷却能力・消費電力・コンプレッサー出力が混在しているため、何が良いのか選び方がよくわかりませんよね。そこでこの記事では以下の4つを順番に解説していきます。

  • そもそも自分にチラーが要るのか
  • 仕様表のどのWを見て、必要な冷却能力をどう決めるのか
  • 買う前に確認しておくこと(電源・ホース・置き場所)
  • 本体価格のほかに、何にいくらかかるか


水風呂チラーが要る人・要らない人

家庭用の水風呂チラー(コールドプランジ)の本体

スペックの話に入る前に、そもそも自分にチラーが要るのか、コスト的にどうなのかを確かめておきましょう。判断の材料はシンプルで、使用頻度・水量・使う季節の3つです。

  • 要らない可能性が高い…月2回以下/200L前後/使うのは涼しい時期だけ。氷を買ってきて入れるほうが安く済みます
  • 検討する価値がある…週2回以上/320L以上/夏場にも使う。この3つが重なると、氷での運用は続かなくなります

水温は地域・月・給水設備で大きく変わります。真夏の日中に蛇口から出る水の温度を一度測っておくと、必要な下げ幅がはっきりして、この先の計算がぐっと正確になるはず。

POINT

氷を入れても水風呂は完成しますが、チラーの特徴は低い温度を維持することにあります。どちらが得かは、使う頻度で答えが変わりますが、価格よりも体験を重視されたい方は頻度に関係なくチラーを導入することをおすすめします。詳しくは水風呂を冷やすのは氷かチラーかで比べました。

ここから先は、導入を検討する人が何を見て選ぶかに絞って進めていきます。


家庭用チラーの「W」は3種類ある

水風呂用チラーの操作パネルと温度表示

ではサウナチラー(水風呂用チラー)を検討するうえで、何を見て選べば良いのでしょうか。まずはスペックの解説から行います。

冷却能力・消費電力・コンプレッサー出力の違い

いざ家庭用チラーを選ぼうとすると、スペックの複雑さに挫折してしまうかもしれません。自宅サウナ向けに売られている機種でも、仕様表に出てくるWは少なくとも3種類あります。

  • 冷却能力(W)…水から1秒あたりどのくらいの熱を奪えるか。まず比べるべきはこれ
  • 消費電力(W)…コンセントから引く電力。電気代の計算に使う数字で、冷却能力とは別物
  • コンプレッサー出力(W)/馬力(HP)…圧縮機の規格。冷却能力とは一致しない

このうち選定に使うのは冷却能力です。「1馬力」という表記も、そのままでは冷却能力を意味しません。仕様表では数字だけでなく、項目名までしっかり読むようにしましょう。

「1時間で何℃下がる」表記を冷却能力Wに直す

家庭用の小型機は、冷却能力ではなく「200Lを1時間で2℃下げる」といった表記しかないことがあります。比べたいのに単位が違う、という状況です。

その場合は水の比熱から換算できます。単位をWに揃えて初めて、機種どうしが同じ土俵に乗るということ。換算の式は次の章でそのまま使います。


水量と下げ幅から必要な冷却能力(W)を逆算する

320Lの水風呂用浴槽(空気注入式のPVCタブ)

見るべき数字が冷却能力だと分かったところで、次の疑問は「では自分の水風呂には何Wが要るのか」でしょう。ここは感覚ではなく計算で出せます。使うのは水量と、下げたい温度の2つだけです。

計算式と考え方

自宅の浴槽であっても、水を冷やすのに要るエネルギーは水の比熱から素直に決まります。使う式はひとつだけ。

POINT

冷却にかかる時間(時間)= 水量(L)× 4.186 × 下げ幅(℃)÷ 冷却能力(W)÷ 3.6

4.186は水の比熱(kJ/(kg·K))、3.6はkJとWhの単位をそろえる係数です。「何時間で冷やしたいか」が先に決まっているなら、この式を組み替えれば必要なWが求められます。

たとえば320Lの水を10℃下げたい場合。320 × 4.186 × 10 ÷ 3.6 = 約3,720Whのエネルギーを抜き取ることになります。1時間で冷やしたいなら、理論上でも約3,720Wの冷却能力が必要という計算。3,000Wの機種なら理論値で約1.2時間、2,000Wなら約1.9時間かかります。

「何時間で冷やしたいか」で必要Wが決まる

ここまで見れば分かる通り、結局「冷えるまでにどのくらい待てるか」が選び方の肝になります。家庭用の水風呂で使う前提なら、小型のチラーでも時間をかければ冷やすこと自体はできます。問題は何時間かかるかです。

例えば同じ320Lでも、前夜にセットして朝までに冷えていればいい人と、思い立って1時間後に入りたい人とでは、必要な能力が倍以上も変わります。つまりスペックが決めているのは単純に水量ではなく「どれだけ待てるか」だということです。以下に例を表にまとめます。

水量/下げ幅 1,500W 2,000W 2,500W 3,000W
200L/10℃ 1.6時間 1.2時間 0.9時間 0.8時間
320L/10℃ 2.5時間 1.9時間 1.5時間 1.2時間
320L/15℃(真夏) 3.7時間 2.8時間 2.2時間 1.9時間
377L/10℃ 2.9時間 2.2時間 1.8時間 1.5時間
377L/15℃(真夏) 4.4時間 3.3時間 2.6時間 2.2時間
500L/10℃ 3.9時間 2.9時間 2.3時間 1.9時間

列のW数はいずれも冷却能力です。消費電力の値をここに当てはめると、まったく違う答えが出てしまいます。この表はあくまで理論上の下限。実際にはこれより長くかかることが考えられます。

これを見て「長すぎる」と感じたなら、打ち手は3つ。冷却能力の高い機種を選ぶ・水風呂の容量を小さくする・氷と組み合わせるのいずれかです。

自宅の浴槽の水量と希望時間から、必要なWを直接引く

選ぶ段階でほしいのは「この浴槽なら何Wの機種か」という答えでしょう。先ほどの式を組み替えると、そのまま引ける表になります。夏場に25℃の水を15℃まで、つまり10℃下げる前提で置いています。

浴槽の水量 1時間で 2時間で 3時間で 一晩(8時間)で
200L 2,330W 1,160W 780W 290W
320L 3,720W 1,860W 1,240W 470W
377L 4,380W 2,190W 1,460W 550W
500L 5,810W 2,910W 1,940W 730W

家庭用として流通しているのは2,000〜3,000W級が中心です。表を横に見ていくと、320Lなら「2時間待てるかどうか」が機種選びの分かれ目だと分かります。1時間で入りたいなら3,700W級が要りますが、そこまでの機種は家庭用にはほとんどありません。

逆に、前の晩からタイマーで回しておける環境なら、必要なWはぐっと下がります。同じ320Lでも、1時間で冷やすのと一晩かけるのとでは、必要な能力が8倍違う——この幅が、機種選びで最初に決めるべきところです。

なお、スマホアプリで遠隔操作できる機種なら、外出先から運転を始めておき、帰宅してサウナから出るころには冷えている、という使い方もできます。取り扱い機種ではブロスサウナの冷エールがWi-Fi経由の遠隔起動と電源オンの予約タイマーに対応しています。


逆算した数字どおりに冷えない2つの理由

水風呂用チラー背面の放熱ファンと定格を示す銘板

前の表は理論上の下限だと書きました。実際にはこれより長くかかるのですが、その理由は家庭用チラーのカタログの読み方に表れています。押さえるべき点は2つ。

公称値には測定条件が付いている

見落とされがちなポイントは、メーカースペックの冷却能力を測定したときの環境です。これとセットで見なければ意味を持ちませんし、自宅の設置環境がその条件と同じとは限りません。

もしカタログスペックが春や秋の外気温くらいで測定されている数値であれば、実際に夏場で使ってみると、スペックよりも多くの時間がかかることを想定しておきましょう。

たとえば、idetoxで取り扱うHarviaのコールドプランジは公称3,000Wですが、これは外気温32.5℃・入口水温22.9℃・流量17.2L/minでの測定値。条件が明記されている時点でむしろ誠実な表記で、条件の書かれていない数値・商品もたくさんあります。こちらの商品の詳しい仕様はコールドプランジの製品ページをご覧ください。

水温が下がるほど能力は落ちる

もうひとつ、理論値どおりにいかない事情があります。家庭用サウナに合わせた小型機でも大型機でも、冷凍サイクルは冷やす側と外気の温度差が広がるほど効率が落ちるものです。具体的には25℃の水を20℃にするのと、8℃の水を3℃にするのとでは、同じ5℃でも後者のほうが時間がかかるのです。

つまり、キンキンに冷えた水風呂を求めるなら、目標が低いほど、最後の数℃でいちばん時間を食うと考えておくことが重要です。どれだけ余分に見ておくべきかは、外気温・日射・浴槽の断熱・ふたの有無・ホースの長さで変わるため、一律の倍率では決められません。候補機種の公称値がどんな条件で測られた数字かを確認し、販売店に聞く——これがいちばん確実です。


チラー付き水風呂に要るもの|電源・ホース・置き場所

コンセントまわりを確認する電気工事のイメージ

ここからは、家庭用チラーを自宅に導入するにあたって何を確認しておくべきかを解説していきます。自宅サウナの設置場所とセットで考える部分です。

電源で確認すること

自宅の既設コンセントに挿すだけで使えるなら手軽ですが、「100Vで動く」と「今あるコンセントで安全に使える」は別の話です。家庭用チラーでも1,000Wを超える機種は珍しくなく、一般的な配線器具の上限(1,500W)に近づく可能性があります。

たとえば冷エールは100Vの家庭用コンセントで動き、電気工事が不要な機種です(定格消費電力1,030W・最大入力電流12.5A)。それでも、次の項目の確認は省けません。

取扱説明書で次の項目を確認し、条件を満たさない場合や判断がつかない場合は、電気工事業者に相談してください。

  • 定格消費電力と最大入力電流(起動時は定格より大きな電流が流れます)
  • 専用回路の要否。ほかの家電と同じ系統で使うとブレーカーが落ちます
  • 接地(アース)と漏電遮断器。水まわりでは必須の扱い
  • 屋外で使う場合のコンセントの防雨性と、機器側の防水等級

ホースをつなぐだけで使えるか

浴槽側面にあるチラー接続用の給水口(Water IN)

家庭用チラーは給排水ホースで水を循環させて冷やします。つまり浴槽側にホースを入れられるか、接続口があるかを先に確認しておきましょう。

空気注入式の浴槽には、あらかじめ循環用の穴が開いている製品がありますし、チラーとセット販売されている場合もあります。これらを使うと安心です。ポンプが本体に内蔵されているか別売りか、メーカーの指定する循環流量はいくつか——ここも仕様表で見ておきたい項目。

また、ホースの長さも確認してください。チラーは日陰や風通しのよい場所に置く必要があるため、水風呂の浴槽から離れがちです。付属ホースで届かなければ延長が要りますが、ホースを長くすると抵抗が増えて循環量が落ちます——つまり冷却性能そのものが下がるということです。置き場所とホースの長さは、セットで考えておきましょう。

屋外に置くときの確認事項

自宅の庭やベランダなど、チラーや水風呂を屋外に置くときには確認が増えます。

まず、冷却機本体が防水とは限りません。雨風と直射日光を避け、排熱がこもらない水平な場所に置くのが基本です。このスペースや囲いが問題ないか、準備できるかを確認しましょう。エアコンの室外機と同じ仕組みなので、運転音と排熱が出ます。寝室や隣家との距離も、置き場所を決める前に見ておきたいところ。

さらに確認するのは、使わない期間の水抜き、冬季の凍結、浴槽側の排水経路です。特に、設置してから「水をどこに流すか」で困る例は少なくありません。浴槽のサイズを決める前に、排水先まで含めて考えておくと安心です。浴槽の置き場所や重さ・排水の確認は水風呂の浴槽の選び方で詳しく扱っています。


サウナ用チラーの電気代と総額

分電盤のブレーカーと回路を確認するイメージ

必要な能力と設置条件が見えたら、残るはお金の話。毎回かかるものと、本体以外に一度だけかかるものを分けて見ていきます。

1回あたりの電気代は数十円

意外に思われるかもしれませんが、チラーの電気代は氷代に比べると誤差の範囲でしかありません。計算は「消費電力(kW)× 運転時間 × 電力量単価」だけ。

電力量単価を31円/kWh(家電公取協の目安単価)として、消費電力1,000Wの機種を1回2時間動かすなら約62円。1,400Wなら約87円です。週1回の使用なら、年間でも3,000〜4,500円ほどに収まります。チラーを使った自宅の水風呂は、多くの人が思っているランニングコストより安く済むのではないでしょうか。実際の単価は契約プランや燃料費調整額で変わるので、ご自宅の検針票の単価で置き換えてみてください。

自宅サウナ全体の電気代と合わせて見ておくと、月々の負担が読みやすくなります。

実は大きい、本体以外にかかるもの

毎月の負担が小さいぶん、効いてくるのは最初にかかる本体以外の初期費用です。特に見落としやすいのは次の項目。

  • 浴槽と、それぞれの送料
  • 設置工事費
  • ホースの延長、接続部材
  • フィルターの交換(消耗品)
  • 保証期間と、期間後の修理費・補修部品の保有期間

式にすると 総額 = 本体 + 浴槽 + それぞれの送料 + ホース・接続部材 + フィルターなどの消耗品。本体価格だけで比べると、総額の順位が入れ替わることがあります。まずは販売店に詳細な見積りを出してもらうのが確実です。


まとめ|自宅サウナ用チラーを選ぶ順番

空気注入式のポータブル水風呂と付属の空気入れ

ここまでを、選ぶ順番に並べ直しておきます。

  1. 浴槽の水量を決める。ここがすべての計算の起点になります
  2. 真夏の水道水の温度を測り、下げ幅を出す。25℃から15℃なら10℃
  3. 何時間で冷やしたいかを決める。ここがいちばん機種を左右します
  4. 「水量 × 4.186 × 下げ幅 ÷ 3.6 ÷ 希望時間」で必要な冷却能力(W)を出す
  5. 仕様表の冷却能力と突き合わせ、その値がどんな条件で測られたかまで確認する
  6. 電源・循環流量とホースの長さ・置き場所と排水・本体以外の費用を確認する

迷いやすいのは4と5です。仕様表のWが冷却能力なのか消費電力なのかを見誤ると、答えが丸ごと変わります。項目名まで読むこと——この記事でいちばん覚えて帰ってほしいのはそこ。

なお「そもそも氷で足りるのでは」という段階の方は、水風呂を冷やすのは氷かチラーかのほうが判断しやすいはずです。

idetoxでは商材としてのご購入と、自宅サウナ本体との組み合わせのご相談を承っています。設置場所と使い方さえ伺えれば、必要な冷却能力と総額の内訳をセットで整理いたします。ご相談だけでも構いません。

自宅サウナの絞り込みからご一緒します → サウナ選びサポート


よくある質問

最後に、水風呂用チラーを調べていると出てくる疑問をまとめておきました。

Q. 水風呂用チラーの価格はいくらくらい?

家庭用は本体のみで数十万円台が中心です。冷却能力が高い機種ほど価格も上がる傾向。

浴槽が別売りの製品も多いため、総額では浴槽代・送料・ホース類も見込んでおきたいところ。取り扱い機種は水風呂チラー・浴槽の一覧から確認できます。すでに浴槽をお持ちなら、チラーだけを足す構成も可能です。

Q. 水風呂チラーの電気代は月にいくら?

自宅サウナで使う場合、消費電力1,000W級を1回2時間・週1回動かす条件なら月270円ほどです。同じ条件で年300回なら月1,550円前後(31円/kWhで計算)。

設定温度を保つための断続運転、ポンプ、ろ過、外気の条件によって、実際はこれより増えます。ふたや断熱カバーを併用すると保温運転が減り、電気代も抑えられるはず。

Q. 水風呂のチラーは自作できる?

技術的には可能ですが、推奨できません。自宅の屋外で水と電気を扱う以上、漏電と感電のリスクが常につきまといます。

電気用品安全法の対象に当たる製品は、製造・輸入事業者が技術基準への適合を確認し、PSE表示を付けて販売しています(国が個々の製品を認証する制度ではありません)。自作した機器はこの枠の外にあり、事故が起きたときの保証や保険の扱いも変わってきます。

Q. 水槽用クーラーで水風呂を冷やせる?

自宅サウナの水風呂への使用をメーカーが認めていない機種は、転用しないでください。アクアリウム向けは対象水量が小さく、人が入る用途は想定されていないのが普通です。

能力の面でも届きません。仮に冷却能力200Wの機種で320Lを10℃下げるなら、理論値でも約18.6時間。その間ずっと外気から熱が入り続けるため、目標温度に届かないまま平衡してしまうおそれも。対象水量の上限と、入浴中に運転してよいかは仕様と取扱説明書に書かれています。そこを先に確認してください。

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サウナにハマり「サウナ・スパ 健康アドバイザー」や「サウナ・スパ プロフェッショナル」「サウナ・スパ 健康士」の資格を取得。 サウナの利用は週に1回程度のミドルユーザーです。主に記事の執筆を担当しています。

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