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日本はなぜフィンランドのサウナが流行ったのか?【サウナの誕生と第1次、第2次、第3次ブーム】

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日本はなぜフィンランドのサウナが流行ったのか?【サウナの誕生と第1次、第2次、第3次ブーム】

はじめに

2020年頃からサウナブームが起き、そこからサウナ愛好家である"サウナー"が年々増えてきています。

しかし日本のお風呂をはじめ、世界にはたくさんの温浴文化があります。フィンランドのサウナ、ロシアのバーニャ、メキシコとのテマスカル、イスラム圏のハマムなどなど数えればキリがないほどです。

たくさんの種類がある温浴文化の中で、なぜ日本では伝統的な「お風呂」に加えて、フィンランドの「サウナ」が流行していったのでしょうか?

ここではその理由について触れながら、日本の浴場文化の歴史やサウナの歴史と背景、またその後の流行について解説していきます。

 

日本の風呂と温浴文化

日本には多くの火山があり、古来より湧き水や温泉に恵まれていました。この温泉は野生の動物も利用していたとされ、それを知っていた古代の人々は、傷や病気を治す目的で利用していたと考えられています。

 

7世紀頃には人工的に作った温浴施設が作られました。京都の八瀬で見つかっているものは、土でつくった「かまくら」のような部屋の中で焚き火をして、そこに塩水(おそらく海水)を入れて蒸し風呂にしていたようです。

 

そして温浴文化を全国に広めた1つが仏教だとされています。

6世紀頃に伝来した仏教の教えの中に「温浴によって病を治癒し、幸福を得る」という内容があります。これをもとにして、8世紀頃から人々にお寺のお風呂が提供されるようになったようです。

実際、奈良の東大寺には「大湯屋」という大きな木造のお風呂があり、これに関する記述も多く残っているようです。

 

11世紀頃からビジネスとしての「銭湯(お風呂屋)」が作られ始め、18世紀の江戸時代には大衆浴場が広く浸透していきました。

 

日本のサウナの誕生

※画像はイメージです

日本に国産サウナが誕生したのは昭和26年(1951年)に開業した「東京温泉」の中に昭和32年(1957年)に増設されたものとされています。

当時社長をしていた許斐 氏利(このみ うじとし)さんは射撃の日本代表でもありました。彼が、1956年に開催されたメルボルンオリンピックに出場した際に、フィンランドの選手団がサウナを持ち込んでいたのを見て、それをヒントに国産サウナを作ったそうです

しかし「東京温泉」に国産サウナが作られても、すぐには人々に浸透したり流行したりしませんでした。

 

日本のサウナの流行(第1次サウナブーム)

本格的にサウナが注目されたのは昭和39年(1964年)の「東京オリンピック」です。

ここでは選手村や競技場近くでフィンランドのサウナが設置されたのですが、これをマスコミが取り上げて大きな話題を呼びました。これが「第1次サウナブーム」です。

つまり、ロシアの"バーニャ"やイスラム圏の"ハマム"など他の温浴文化ではなく、フィンランドの"サウナ"が流行ったのは東京オリンピックと当時のマスコミの力だったとも言えそうです。

また、このころの日本は高度経済成長期で、庶民の所得が急激に増えてお金を娯楽や健康にも使えるようになっていました。そのことも合わさって人々に広くサウナが流行していったようです。

このことはPertti Jarlan の「The Japanese Sauna: A Cultural History」や William W. Kelly の「The Japanese Sauna Society」など、さまざまな書籍や記事、また研究論文で記載されています。

 

日本のサウナの流行(第2次サウナブーム)

残念ながら第1次サウナブームは長くは続かず、サウナの存在は知られていても多くの人々に日常的に利用されるには至りませんでした。

しかし再び注目される時期が訪れます。

人々の健康志向は年々高まっていった1990年代に「手軽なダイエット」「スーパー銭湯」「健康ランド」などが流行したときです。

このとき、正確にはサウナそのものに大きな注目が集まったわけではありませんが、健康ランドやスーパー銭湯などに併設されているサウナも多くの人に利用されるようになり、ダイエットや健康に効果があるとして再びブームとなりました。(第2次サウナブーム

現在でもこの時期に作られた温泉施設は多く残っていて、温泉施設に「食事処」や「マッサージを受ける施設」などが併設されたのもこの頃からだとされています。

 

日本のサウナの流行(第3次サウナブーム)

そして近年起きているのが第3次サウナブームですね。

火付け役はクリエイターのタナカカツキ氏。サウナでの体験談などをユーモラスに表現した漫画「サ道」は、ドラマ化とともに一気に浸透し、再びサウナが注目されるようになりました。これが近年起こっている「第3次サウナブーム」です。

 

今回のサウナブームでは、これまでのサウナブームに比べて、サウナに関する「健康効果」や「効果的な入り方」などの研究が進み、より根拠のある精錬した効果や入り方も広まっています。

それによって、たとえ直接的に効果を実感していなくとも、プラセボ効果としてサウナのメリットを体感している人も多いように感じています。

 

また過去のサウナブームよりもサウナの質に対してこだわりが強くなってきたのも今回のサウナブームの特徴の1つです。おそらく第2次サウナブームで作られた温泉施設がすでにあるため、「サウナがあること」自体は、なにも施設の強みではなくなってきたからです。

例えば、ロウリュやアウフグースの有無、またアロマの香りやサウナのデザイン、水風呂の温度や外気浴で自然が堪能できる場所(地理)、また導線などです。加えてサウナの種類も、第2次サウナブームで主流だった「ドライサウナ」から「フィンランド式サウナ」「塩サウナ」「遠赤外線サウナ」など様々なサウナが展開されています。

 

今後、今の第3次サウナブームがどうなるのかをはっきり掴めない部分もありますが、少なくともサウナの多角化は続き、これまでのように誰もが楽しめるサウナ施設よりも、少し尖ったサウナ施設の方が増えていくのは、ほぼ間違いないと言えるでしょう。

サウナーからすると、よりととのえる、”自分のサウナ”が見つけやすくなって、いい時代になるのではないかと思います。

サウナにハマり「サウナ・スパ 健康アドバイザー」や「サウナ・スパ プロフェッショナル」「サウナ・スパ 健康士」の資格を取得。 サウナの利用は週に1回程度のミドルユーザーです。主に記事の執筆を担当しています。

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