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健康寿命を伸ばすためのサウナの効果について【論文まとめ】

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健康寿命を伸ばすためのサウナの効果について【論文まとめ】

はじめに

サウナは多くの健康効果が期待される、フィンランド発祥の入浴法の1つです。近年はサウナブームと呼ばれるほど、多くの若い世代の方がサウナにハマり、楽しんでいますね。

実際私も定期的にサウナを利用していますし、サウナに入ると心が落ち着き、ストレスが減っているように感じています。また、サウナ後の爽快感は格別で、体がリフレッシュする感じがします。

では科学的に見て、サウナは私たちの健康にどのように貢献するのでしょうか

この記事では、サウナに関する多くの研究論文を発表しているアメリカのロンダ・パトリック医師らの「健康寿命を延ばすためのライフスタイルとしてのサウナ利用(原題:Sauna use as a lifestyle practice to extend healthspan)」をもとに、サウナがいかにして私たちの身体に良い影響を与えるかを、学術的な観点から解説していきます。

  

健康寿命を伸ばすサウナの効果について

サウナは心血管系、神経系、筋肉の健康に役立つ多くのメリットがあるとされています。

冒頭にお伝えしたロンダ・パトリック氏らの研究は、この効果について以下の5つのポイントにまとめてあります。

  • ①サウナの使用は、運動中に誘発される生理学的および保護的反応を模倣する。
  • ②サウナを繰り返し使用すると、ホルミシスとヒートショックタンパク質を介してストレス反応が最適化される。
  • ③サウナの使用は、用量依存的に罹患率と死亡率を低下させる可能性がある。
  • ④サウナの頻繁な使用は、心血管疾患および神経変性疾患に罹りにくくする可能性がある。
  • ⑤サウナの使用は筋肉固まりを維持し、サルコペニアに対抗する1つの方法になる。

どれも学術的で、文章だけでは理解が難しい内容ですね。これらを分かりやすく解説していきます。

 

①サウナは運動の代わりにもなり得る

サウナに入ると、体温が上昇し、心拍数や血流が増加し、汗が分泌されますね。

これらの身体の反応は、中強度から激しい強度の有酸素運動中(ウォーキングやランニングなど)にも同じように起こります。

つまり(運動が難しい人にとっては特に)サウナに入ることが、心肺機能や代謝を改善する「運動の代わり」となる可能性があるということです。

 

②心臓病や認知症・アルツハイマーなどのリスクを減少させる

体は軽度のストレスを受けることで、より強いストレスにも耐えられるようになるとされています。この現象は専門用語で『ホルミシス』ともよばれており、医療の現場で多く活用されています。

熱いサウナに入ることで、息苦しかったり、暑苦しかったりと軽度のストレスにさらされますね。これによって身体をより外的ストレスから強くすることができるとされています。

 

また、サウナに入ると身体の中では『ヒートショックプロテイン』と呼ばれるタンパク質が増えます。すると体内の他のタンパク質の損傷などを防ぎ、細胞を強くすることができるのです。

 

これらの『ホルミシス』や『ヒートショックプロテイン』によって、心臓病などの心血管疾患、認知症やアルツハイマーなどの神経変性疾患に罹りにくくする効果があると考えられています。

 

③サウナの利用頻度によって心疾患等の死亡率が違った

フィンランドで行われた大規模な研究では、サウナに入る頻度と心疾患や心血管疾患の関連性について調べられています。

この研究によると、サウナに入る回数が多いほど、心筋梗塞や狭心症などの病気になるリスクやそれで死亡するリスクが低いことが示されました。

つまり、サウナの利用頻度は、「時々」よりも「頻繁」の方が、心臓の病気のリスクが少なくなるようです。

 

④利用頻度が多いほど認知症やアルツハイマー病のリスクが低かった

③で行われた研究では、サウナの利用頻度と、認知症やアルツハイマー病などの神経変性疾患の関連性についても調べられています。

この研究によると、週に4回以上サウナに入った人は、週に1回以下しか入らなかった人と比べて、認知症やアルツハイマー病のリスクが約65%低かったことも示されました。

つまり、サウナの利用頻度は、「時々」よりも「頻繁」の方が、脳の病気のリスクも心臓同様に少なくなるようです。

 

⑤サウナの利用で加齢に伴う筋力低下を軽減する

人間の筋肉の量や筋力は加齢によって低下していきますね。これを専門用語で『サルコペニア』と呼ばれています。

サウナを利用することで、ヒートショックプロテインを増やし、筋肉の萎縮を防ぐことが示されています。また、サウナの使用は、筋肉の血流や酸素供給を改善し、筋肉の代謝や回復を促進することが示唆されています。

このことから定期的にサウナに入ることは、サルコペニアを軽減する有効な手段の1つとして結論づけています。

誰からの介護も受けずに自立した生活を続けていくためにも、サウナはとても有効なのかもしれません。

 

サウナの効果に関する注意

同研究報告内でも記載されていますが、元来はサウナはトウヒやパイン材などで作られた部屋の中でストーブの熱によって部屋を温められます。

今日ではフィンランド式サウナやスチームスチームサウナなどサウナの大枠の種類だけでなく、そのサウナ室を作る素材や方法など多種多様なサウナが存在します。また、入り方についても人それぞれで、短時間でサッと済ませる人もいれば、熱さに耐性があって、比較的長時間滞在する人もいるでしょう。

今回研究で報告されている事象が、あなたがよく行くサウナで、もしくはあなたのサウナの入り方でも当てはまるという保証はありません

この点を考慮して、研究で報告されているサウナの効果を過信しすぎないように注意しておきましょう。

 

まとめ

  • サウナは心肺機能や代謝を改善し、運動が難しい人にとって運動の代替となり得る。
  • サウナはホルミシス効果とヒートショックプロテインの増加により、心臓病や認知症・アルツハイマーのリスクを減らす。
  • サウナ利用頻度が高いほど心疾患のリスクが低下する。
  • サウナ利用頻度が高いほど認知症やアルツハイマー病のリスクも低下する。
  • 定期的なサウナ利用は、加齢に伴う筋力低下を軽減することが示唆されている。

サウナは、適切に利用することで健康寿命を延ばす手段となる可能性があります。心血管疾患や神経変性疾患のリスクを減少させる効果が期待されています。定期的なサウナ利用をライフスタイルに取り入れてみてはいかがでしょうか。

 

参考文献

  • Patrick, R.P., & Johnson, T.L. (2021). "Sauna use as a lifestyle practice to extend healthspan." Experimental Gerontology, 111509. DOI: 10.1016/j.exger.2021.111509

サウナにハマり「サウナ・スパ 健康アドバイザー」や「サウナ・スパ プロフェッショナル」「サウナ・スパ 健康士」の資格を取得。 サウナの利用は週に1回程度のミドルユーザーです。主に記事の執筆を担当しています。

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