【妊活中はサウナを避けるべき?】サウナが精子に与える影響を解説
はじめに
熱が精子の生産や質に影響を与える可能性があることは知っている人も多いかもしれません。
では、サウナに入ると精子にどのような悪影響を与えて、どのように生殖能力に悪影響を及ぼすかご存知ですか?
今回はそんなサウナと精子の関係について、いくつかの研究結果をもとに解説していきます。
サウナと精子の関係
熱ストレスがあると精子の数はどうなるのか
陰嚢(睾丸、金玉を保持する袋)は体の外側にありますね。こうすることで、睾丸の温度は体温よりも2~8℃低い温度を維持することができると言われています。この温度が精子の生産に最適な温度なのです。
しかし、自転車に乗ったり、ノートパソコンを膝の上に置いたりすると一時的に陰嚢の温度が上昇し、精巣に「熱ストレス」を与えることが指摘されています。
この熱ストレスがあると、精子の濃度が減ったり、動きが悪くなるなどの影響があるとされています。
実際に、リビアのバイオテクノロジー研究センター(BTRC)が2019年に発表された研究(※1)でも、
精巣の温度がわずかに上昇しただけでも、数週間精子の数が減少する
ことが示されました。また、
異数性のある精子(染色体の数が変異した精子)が増えている
ことも同時に確認されています。
この研究でも示されているように、「精子が熱に弱い」というのはいくつかの研究でも示されていますし、多くの人は漠然とした認識があるのではないかと思います。
サウナで精子は減るのか
ではサウナに入るとどのくらい精子の生産に影響を与えるのでしょうか。
イタリアのパドヴァ大学で生殖医学を研究するアンドレア・ガローラ氏らの研究(※2)では、
サウナでは陰嚢の温度の上昇が引き起こされ、週に2回、3か月間サウナを利用すると精子の濃度と運動性が50%以上低下する。
ことが示されています。
他にもトルコで泌尿器科医をしているコスクン・カヤ氏らが2020年に発表した研究(※3)でも、
サウナを定期的に使用する人は精子濃度が低下している
ことが示されています。
これらの研究の結果からも、サウナの利用は精子の生産に悪影響を与えていることが分かります。
サウナの精子への影響はいつまで続く?
一方で、いくつかの研究を見ても、サウナの精子への影響は「サウナをやめてから数ヶ月以内に元に戻る」とされています。先ほどのアンドレア・ガローラ氏らの研究(※2)でも
サウナの使用をやめてから3ヶ月後までは精子の量が減少したままになる。サウナを止めてから6か月後には、精子の生産などへの影響はなくなっている
と報告されています。
つまり、一度サウナに入ったらずっと精子の数が少ないわけではないようでが、サウナをやめたらすぐに精子の量がもとに戻るわけでもないようです。
妊活への影響は?サウナと生殖能力の誤解
妊活への影響はないかもしれない
ここで気になるのは、サウナに入っている男性は妊活に影響するかどうかですね。
結論から言うと、実は「妊活中の男性はサウナを控えたほうが良い」とは言えない可能性があります。
言い換えると「精子の濃度が減ること」と「生殖能力(妊娠するための能力)が下がること」は必ずしも同じではないかもしれないのです。
イギリスの名門インペリアル・カレッジ・ロンドンの名誉教授でもあるイルポ T. フタニエミ氏らの研究(※4)によると、
定期的にサウナを利用することは、生殖能力の低下とは関連しない可能性がある
とされています。定期的にサウナに入っても、正常な人(精子の生産や能力に異常がない人)であれば生殖能力に大きな影響を与える可能性は低いということです。
つまり、「妊活中でもサウナに入って問題ないかもしれない」ということです。
フィンランドの事例
実際、ほとんどの人が昔からサウナに日常的に入っているフィンランドは不妊治療の件数は多いのでしょうか。
野村総合研究所が出している「諸外国における不妊治療に対する経済的支援等に関する調査研究」によると、フィンランドの人口100万人あたりの体外受精実施件数(870件)は日本(1,323件)より小さい数字となっています。
不妊の原因は年齢や生活習慣など様々なものがあるため、一概にサウナだけが関連しているわけではありません。ただ、少なくともデータからは「サウナによく入っている国では不妊治療件数が極端に高い」とは言えないようです。
正確に判断するにはまだデータが足りない
サウナの妊活への影響に関しては、「人種による違い」や「サウナの種類による違い」「入り方の違い」、また「小さいときからサウナが当たり前だったか」や「長期的な生殖能力への影響」など、具体的な研究がまだまだ不足しています。
実際、(サウナによく入っている)フィンランド人は「精子の濃度が高い」という矛盾したようなデータもあったりします。
現時点ではサウナの利用は避妊につながるわけではないと言えそうですが、サウナの妊活への影響を正確に判断するにはまだまだデータが足りないように思います。
1%でも妊娠する確率を上げたいのであれば、男性は数カ月間はサウナを控えたほうが良いのかもしれないですね。
まとめ
サウナが精子の生産に短期的に悪影響を及ぼすことは多くの研究から立証されています。
しかし、サウナの長期的な影響や、それによって生殖能力(妊娠能力)にどのように影響を与えているかは、現在までまだまだ未知数です。
ストレスの解消や自律神経のバランスを整えるなど、多くの健康効果があるサウナですが、子作りをしている(妊活中の)男性は、念のためサウナを我慢したほうがいいかもしれません。
参考文献
※1:https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S1642431X18304030
※2:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/23411620/
※3:https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S1698031X19300809
※4:https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S2451965019301048
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